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油絵 3

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主題 : レデンプトール修道会神父

作者 : 無名

地域 : ナポリ

所蔵: Congregazione dei Redentoristi

技法: 油絵

制作時期  : 19世紀初頭

レデンプトール修道会神父の半身像。
テーブルの上に置いてある本は「メアリーの栄光」。
この本はリグオリのサント・アルフォンソの著書である。
彼はレデンプトール修道会の創立者であり、18世紀のイタリア教会の中でも本質的に素晴らしい宣教師だった。

​修復前の状態

キャンバス :キャンバスはオリジナルで、手職人工業製である。網目は粗い。弛んでいて、表面が埃で汚れている。 上部に穴あり。手の部分に破れあり。全4枠部分、キャンバスの破れ、ほころびが目立つ。 裏面には湿気によるしみあり。

木枠 : 釘打ちによる固定木枠。木はぼろぼろ状態。湿気による損傷とカビあり。

下地 : おそらく動物性の糊と白顔料による下地層。キャンバスとの粘着性は良。下地層の粘着性は悪い。

絵具層 : 表面はかなり乾燥している。ほぼ全表面に絵具層の亀裂があり大きい。上面にカビがあり、ほぼ全表面に虫の排泄糞による汚れあり。

修復過程

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洗浄
キャンバスは固定木枠に釘打ちされ、さらに木製の額が釘打ちされていたので、釘を抜いてこの額からはずすことから始める。 次に、部分を試洗浄し、どの溶剤が適切か見る。使ったのは 1)ぬるま湯, 2)水 + アルコール, 3)水 + アセトン, 4)水 + アルコール + アセトン, 5)Dimetilsolfossido (50%, 100%), 6)Saliva sintetica, 中和にessenza di trementina(テレピン油)。 最終的に洗浄に使用したのはDimetilsolfossido 100%。表面の虫の排泄糞の点々はナイフで削ってとる。次に裏面を紙やすりで磨く。

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Velinatura(部分表面保護)
洗浄に使った Dimetilsolfossido により、絵具層の表面が隆起した部分が生じたので(中央部) coletta(膠糊)と和紙で保護する。

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Velatura(表面保護)
水を湿らせた型紙(修復に使う和紙より厚め)を貼る。

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裏面の洗浄
紙やすりとナイフで裏面洗浄。その後、裏面にはアセトンに溶かしたパラロイド3% を防水の為に塗る。

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Inserti(部分キャンバス入れ込み)
キャンバスの穴と同じ大きさの布を作成。(網目の大きさが同じ布を使用し、縦糸と横糸がオリジナルと揃うように注意) これを裏から穴に当て込み、その上に穴が隠れる大きさのガーゼを置いて、パスタ糊で貼り付け、最終的に全表面にcolletta(膠糊)でガーゼを貼り、補強。

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Foderatura(裏打ち)
いつもの油絵修復と同じように裏打ち用仮枠に布を張り、パスタ糊でオリジナルキャンバスと定着させる。

 

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Stiratura(アイロンかけ)
前回前々回と同様にアイロンかけ。温度は45-50度、アイロンは3-5kgとかなり重め。

 

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Svelatura(ワニス取り)
熱湯とスポンジで表面を保護していた紙をはがし、仮枠からはずし、 木枠に釘で固定する。

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Stuccatura(ジェソ充填)
うさぎ膠糊とジェソでキャンバスの凹部分をつめ、紙やすりとナイフで磨く。 テレピン油に溶いたワニス(Vernice retouche)を全表面に塗る。

 

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Reintegrazione pittorica(彩色)
ジェソの部分、色落ちの部分にまず水彩絵具で着色し、ワニス(vernice dammar;かなり表面が乾燥していたため)を塗り、 次にヴェルニーチェ(ワニス)絵具で着色。

 

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