Miki Matsuo
- Happy Art -
額縁

主題 : 木材額縁(銀箔張りにメッカ着色)
サイズ : 縦 116.2 x 横 90.7 x 幅 5.5 x 厚さ 7.5cm
技法 : 木製に銀箔張りにメッカ着色
修復前の状態
額は松の木、二段から成っている。支え部は正接に釘打ち、表部は爪型に構成されている。古い虫食い穴の跡が多く見られる。 古い修復、金色箔(模造)貼りがされてあり、酸化で変色している。オリジナルはメッカ(銀の上に着色して金のように見せる手法)で制作されている。
古い金箔張り
1)外側の部分全て、金色箔(模造)が接着されている。下の部分は剥がれて下地層のジェソが見える部分もあり。
2)下側は全て同じ金色箔(模造)が貼られているが、内側部分は赤系の色で更に着色されている。また、ここにも剥がれている部分あり。他の3部分(左右、上)は手が加えられておらず、オリジナルである
3)外側から3番目の部分は左下30cmと右側全部はテンペラで着色されている。他の部分(左上、上全部)はオリジナルである。
修復過程

Consolidamento della preparazione (下地層の保護)
下地層の見える部 分に、注射器でアルコール50%、水50%と水50%、アクリル33 50%を注入する。

Disinfestazione (消毒、殺菌)
ペルメタル(Permetar)を刷毛で塗る。

Pulitura (洗浄)
アセトンで古い修復の部分を取る。オリジナルの部分はコントラッド2000を使用。始めは薄めて、少しずつ濃くして最終的には純液を使用。 (5%, 10%, 20%, 50%, 75%, 100%)

Consolidamento (保護)
下地層のジェソが隆起した部分には、同じく注射器でアルコール 80%, 水 20%, と、アクリル33を70% 水 30%を注入。

Imprimitura (下塗り)
木が見えている部分にはうさぎ膠(550ml),ジェソ(スプーン 8杯), リトポネ(白い顔料)(スプーン 4杯)を混ぜたものを塗り、 下地層のジェソが見えている部分には魚膠を塗る。

Stuccatura (下地層)
下地層の足りない部分にうさぎ膠とジェソを充填する。
乾いたら紙やすりで研磨。

Bolatura (ボーロ塗り)
黄色いボーロ(Bolo;膠灰粘土)一筆に少量の水、アルコール3滴を混ぜ、更に薄めて湯煎したうさぎ膠を加えて、銀を塗る部分の下に塗る。

Argentatura(銀メ ッキ)
オリジナル部分との境をアルコールで消耗させる。(後でより自然に見せるため)
銀粉をグワッツォ(guazzo;魚膠を薄めたもの)で塗る。
乾いたら、めのう石で研磨し艶を出す。

Reintegrazione pittorica (木材部の着色)
外枠の木の部分にテンペラ(茶色、焦げ 茶) をアクリル33を 50% 水 50%に溶かして着色。

Protezione finale (仕上げの保護)
銀の上にメッカ(セラック(gommalacca)、アルコール、アニリン黄色顔料)をコットンで塗り、 乾いたらその上に魚膠を塗る。色がオリジナルに近づくまでこれを繰り返す。
最後に表面の保護に蜂蝋を塗る。